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色とりどりの薩摩切子で乾杯を
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- 緑、藍、金赤(ピンク)、黄、金紫と食卓を華やかに彩る「型変り酒器5客揃『花宵』」。薩摩切子は色ガラスの種類の多さが特徴の1つです。薩摩びーどろ工芸では、これまでになんと10色もの色ガラスを開発してきました。ほかに瑠璃、黒、銅赤(濃い赤)、ブラウン、古式(淡い飴色)があり、他の産地にはない珍しい色をたくさん持っています。「型変り酒器5客揃『花宵』」は、そんな薩摩切子を堪能するのにふさわしい5色の酒器揃え。しかも色だけでなく、形とカット文様もそれぞれに異なり、薩摩切子の世界を一気に味わえる贅沢なセット品なのです。家族や親族が集まる年末年始に、ぜひ各々が好きな酒器を選んで乾杯してください。
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幻想的な色合いを作る二重被せ
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- 「新しい薩摩切子を作る」という思いで、薩摩びーどろ工芸はさまざまな色を開発してきただけでなく、二重被せも積極的に開発してきました。それが「翡翠」と「紅藤」です。「翡翠」とは透明ガラスの上に緑色ガラスを被せ、さらに瑠璃色ガラスを被せたもので、鳥のカワセミに色調が似ていることからこう名づけられました。「紅藤」とは透明ガラスの上に金赤色ガラスを被せ、さらに瑠璃色ガラスを被せたもので、紫のような色調になることからベニフジの花に例えてこう名づけられました。この独特の色合いを楽しめるのが「竜猪口」です。ちなみに色ガラスを開発するには、透明ガラスと色ガラスの膨張率を合わせるために原料の調整を根気よく行わなければならず、1〜2年ほどの期間を要すると言います。したがって色ガラスの種類の多さだけでも、異彩・超絶なメーカーであることが分かります。
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特別な限定品も一足早くお目見え
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- 薩摩びーどろ工芸では、毎年、その年だけの限定酒杯を開発し販売しています。通常は年始から販売するのですが、2021年版では、特別にこの特集「異彩!超絶!!のジャパンクラフト」で限定20客を先行受注いたします! 大切な人やものへの思いを、曲を奏でるようにして伝えるという意図から名づけられた「2021年限定黒切子 酒杯『奏』-かなで-」は、高台がたっぷりと厚く、背が高いのが特徴。高台はクリスタルガラスの透明感を生かしながら、上部のみ黒色ガラスを被せているので、非常にモダンな印象を与えます。ショットグラスとしてもお楽しみいただけるデザインで、薩摩切子の世界をぐんと広げます。
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島津斉彬により発展した薩摩切子
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- そもそも薩摩切子は、薩摩藩10代藩主(島津家27代当主)島津斉興が医薬品製造に着手した際、薬品の強い酸に耐え得るガラス器の必要に迫られ、江戸から硝子師を招聘し、製造を始めたことが発端と言われます。その後、同11代藩主(同28代当主)島津斉彬により、ガラスに色を被せ、カットを施す技術が高められました。斉彬は西洋列国に負けない国づくりとして、城下郊外に工場群「集成館」を築き、製鉄や造船、紡績などの大規模な近代化事業を推進。ここにガラス工場を移し、ガラス製造は飛躍的な発展を遂げました。中でも日本で初めて紅の発色に成功し、「薩摩の紅ガラス」として評判を呼びました。しかし斉彬が急死すると集成館が縮小され、さらに1863年の薩英戦争によって多くの工場が焼失。1877年の西南戦争前後には薩摩切子の技術は完全に途絶えてしまいました。
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吹き師と切子師を両方抱える職人会社
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- 薩摩切子の復刻が始まったのは、約100年経った1985年のこと。薩摩びーどろ工芸は、その最初の復刻に力を注いだメーカーから分岐し、1994年に設立されました。現在、鹿児島県内に薩摩切子を製造するメーカーや工房が複数社ありますが、自社で窯を持ち、吹きガラス技法でガラス生地を作っているのは、薩摩びーどろ工芸を含めて2社のみ。多くは他社からガラス生地を仕入れて、カットのみを行っているのが現状です。つまりガラス生地を作る吹き師と、カットを施す切子師の両職人がいることで、非常に柔軟で活発な商品開発が可能となります。この点が薩摩びーどろ工芸の強みであり、異彩・超絶なもの作りが生まれる鍵と言えるでしょう。
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製品開発を行うベテラン切子師の鮫島悦生さん
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- 現在、薩摩びーどろ工芸には切子師が9人おり、そのチームをまとめるリーダーが鮫島悦生さんです。鮫島さんはLEXUS NEW TAKUMI PROJECT 2017で鹿児島県の「匠」にも選ばれた実力者。子どもの頃から職人になりたいと思い続け、一時期は東京で舞台照明の仕事に就きますが、生まれ故郷である鹿児島に再び戻ってきました。地元に縁のある薩摩切子が復刻されたことを知り、1年間、募集を待ち続けて薩摩びーどろ工芸に入社。同社で修行を続け、切子師となりました。「全部のカット技術をマスターするには10年かかると言われます。カットラインが少しでもズレるときれいな仕上がりにはならないので、ただひたすら数をこなして、ラインどおりに正確になぞる訓練をしてきました」と鮫島さん。現在は吹き師と共に、1年に2種類の定番製品や大物作品の開発を行う立場となりました。「使い手の方々の声に耳を傾けながら、伝統文様に新しい文様を組み合わせるなどして、常に新しい薩摩切子を生み出しています」。
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意と匠研究所がサポート
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- 意と匠研究所は、これまでも、これからも挑戦を続ける薩摩びーどろ工芸を応援していきます。ここでご紹介する製品の売り上げの20%をいただき、同社の活動や製品について取材や原稿執筆、写真撮影、編集などを丁寧に行い、また新規開発に対してもアドバイスを適宜行っていきます。
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