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新着情報 2020年7月21日
- 「テーブルヤポニカ お猪口 蘇芳染め〈赤〉」は、皆さんのこの夏の定番として、いつも身近に置いてもらえる酒器として、自信を持ってご紹介できる工芸品です。何と言っても、明るすぎず、渋すぎない赤の発色に惹かれます。この赤の奥に見える杉材の木目は日本の四季が描いた自然な縞模様です。そんな色彩や質感を眼差しの先や指先で楽しむ時間は、至高のひとときと言えるでしょう。
梅雨明けの時期に、冷酒を注いで飲むのがおすすめですが、本格焼酎などにもお使いいただけます。あらかじめ水で割って氷で冷やしておいた焼酎や泡盛をこのお猪口に注いで口元に運ぶと、日本酒とは異なる芳醇な香りとキリリと冴えた口当たりに出合えます。お猪口の表面にはほとんど結露もしません。
この 蘇芳染め〈赤〉もいいですが、次は同じお猪口で、藍染め〈青〉やローズマリー染め〈緑〉、ログウッド染め〈紫〉もいいし、形を変えてショットグラスもいいかな、などと妄想を膨らませるのも楽しいものです。特集「異彩!超絶‼︎のジャパンクラフト」で、清水将勇さんの技と感性が結実したこれらの作品をご紹介できることに、喜びを感じずにはいられません。(意と匠研究所代表 下川一哉) -
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草木染めに出合ったきっかけ
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- 「杉材はどの木材よりも柔らかく、優しい手触りなので癒される」と話す、清水将勇さん。木工職人としての修行を経て独立する頃、図書館でたまたま手にした書籍に木材の草木染めが紹介されていたことが、草木染めを始めるきっかけだったと言います。さらに調べると、歴史的にも正倉院宝物を収める箱に蘇芳(すおう)で染めた杉材が使われていて、保存状態が大変良かったという事象が分かりました。つまり大好きな杉材の魅力を最大限に引き出すための方法を追求した結果、辿り着いたのが草木染めだったというわけです。現在はLEXUS NEW TAKUMI PROJECT 2018で茨城県の「匠」にも選ばれるほどの注目作家となりました。
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杉の魅力を引き出す草木染め
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- 独立当初、書籍を参考にしつつも、清水さんは試行錯誤を何度も繰り返し、杉材を草木染めする技法を自ら編み出しました。針葉樹の中でも特に柔らかい杉材は、染液がよく浸みて、鮮やかに染まりやすい特徴を持っています。また、杉材は心材の赤さ(赤身)と辺材の白さ(白太)がはっきりと現れる樹種。草木染めすると、赤身と白太とでは異なる発色を呈し、とても複雑な表情を見せます。木目の細かさや粗さ、節の有無によっても表情が変わります。このように草木染めは杉材の個性を魅力に変え、美しく際立たせる力を持っています。実際にヤポニカの製品を目にすると、木目や節が生き生きと感じられるのに色鮮やかで、まるで木材そのものの色のようにも見えてくるから不思議です。一般的な塗装ではこんな表情には出合えません。
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草木染めの種類と技法
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- 現在、ヤポニカが採用する代表的な草木染めの種類には、藍、蘇芳、ローズマリー、ログウッド、南天、クチナシ、五倍子(ごばいし)、タマネギがあります。いずれも天然の草木を煮出した染液を用いて、杉材に刷毛で直接塗り、乾燥させます。さらに、この前か後で媒染を施します。ミョウバンや鉄、銅などを主成分とする水溶液を用いて、同様に刷毛で直接塗り、乾燥させます。この媒染剤が天然色素と杉材とを結びつける役割を果たし、杉材を鮮やかに発色させるのです。同じ草木染めでも布と杉材とでは発色具合が異なるため、どの染液にはどの媒染剤が向くのか、どんな工程を踏めば良いのかなどを、清水さんはすべて経験的に学んでいきました。異彩・超絶の技はこうして築かれたのです。
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手彫りのテクスチャーを生かす
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- 今回、ご用意したのは藍、蘇芳、ローズマリー、ログウッドの4種類の草木染めで、テーブルウエアブランド「テーブルヤポニカ」の中でも趣味性が高く、1人でも気軽に楽しむことができるお猪口、ショットグラス、マグの3アイテム。いずれもシンプルなフォルムですが、テクスチャーの加工方法に異彩・超絶の技が見られます。成形後に手彫りの跡をあえて残しながら胴を削っているため、その魅力を手に触れて感じることができます。さらに鉄のワイヤーブラシで叩きつける特殊な浮造り(うづくり)加工を施しているため、浮き上がった木目の表情を楽しめるほか、傷がこれ以上目立ちにくいという特徴もあります。また叩きつけた際にできる無数の孔から染料などが染み込みやすくなるため、強度が増し、重厚感のある雰囲気に仕上がります。
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日本酒と相性が良い杉
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- 日本酒を飲む際の枡や、日本酒を醸造する際に使われる杉樽、また酒蔵の玄関に飾られる大きな杉玉など、杉材と日本酒は昔から相性が良いものでした。ぜひ日本酒を注いでお楽しみください。お猪口はお燗やひや酒を、ショットグラスは冷酒を飲むのにご活用いただけます。
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- 一方、マグは普段使いのマイカップとして、コーヒーや紅茶、ミルクのほか、ビールや焼酎のお湯割りなどを飲んでも良いでしょう。杉材は熱伝導率が低いので、ホットでもアイスでも飲み物の温度変化が緩やかなのが特徴。特にアイスの場合、氷が溶けにくく、表面に水滴も付かないので、快適にお使いいただくことができます。また軽くて丈夫なので、アウトドアにも向いています。
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塗膜で覆われているので色落ちの心配なし
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- 草木染めした杉材の器と聞くと、使っているうちに色落ちしないの? 飲み物のシミが付いたりしないの? などと心配になるかもしれません。いいえ、まったくご心配ありません。製品作りの際、染色と媒染後に、染料を固定して組織を強化し、さらに表面を滑らかに整えるために、食品衛生法に適合した2種の樹脂塗料を使用しています。つまり製品全体が樹脂塗膜で覆われているため、水と油が染み込むことはいっさいなく、通常の食器のように、水と中性洗剤できれいに洗い落とすことができます。ただし電子レンジや食洗機、食器乾燥機はご使用にならないでください。
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意と匠研究所がサポート
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- 意と匠研究所は、これまでも、これからも挑戦を続ける清水さんを応援していきます。ここでご紹介する製品の売り上げの約20〜25%をいただき、清水さんの活動や製品について取材や原稿執筆、写真撮影、編集などを丁寧に行い、また新規開発に対してもアドバイスを適宜行っていきます。