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400年以上の歴史を持つ有田焼
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- 佐賀県有田町は、400年以上続く磁器産地として知られています。その発端は安土・桃山時代にまでさかのぼります。文禄・慶長の役(豊臣秀吉による朝鮮半島出兵)の際、他の諸大名と同様に、佐賀藩鍋島家が朝鮮半島から多くの陶工を連れて帰りました。そのうちの1人である李参平(りさんぺい)とその一族が有田町の内山地区に移り住み、泉山で磁器の原料となる良質な陶石を発見。1616年、日本で初めて磁器の焼成に成功しました。その後も佐賀藩鍋島家による産業保護と奨励、また欧州への輸出が盛んとなり、有田焼はさまざまな技術革新を経て発展していきました。こうして有田町は日本有数の磁器産地として栄えたのです。
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伝統に軸足を置きながら新しいもの作りに挑戦する
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- 李参平は、後世に「有田焼の陶祖」として崇められました。その李参平の住居跡に開窯したのが李荘窯(りそうがま)です。頭文字の「李」は、まさに李参平からいただいた名前。時は明治時代末期、元々、瀬戸や常滑で陶彫を作っていた陶芸家が、工芸指導者として有田に招聘されたことが始まりでした。2代目からは業務用食器の生産に携わり、現在に至ります。4代目の寺内信二さんは、李参平をはじめ昔の陶工たちが窯の敷地に残した陶片を自身のもの作りの原点としながら、職人の手描きが生む素朴な染付で知られる初期伊万里様式を引き継いだ、業務用・家庭用食器を生産しています。こうして伝統に軸足を置く一方で、新しい有田焼の表現を追求することにも労を惜しみません。また、国内外へ有田焼を発信するための数々の活動にも精力的に携わっています。
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台湾で出合ったテイスティング茶器
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- そんな寺内さんが3年前、市場調査のため台湾を訪れた際に出合ったのがテイスティング茶器でした。烏龍茶をはじめ様々な中国茶の生産が盛んな台湾では、それらを試飲し品評するための道具が発達しています。寺内さんが着目したのは、マグカップの縁に切れ込みが入った、簡易な蓋付きの茶器でした。これを「非常に面白い」と思うと同時に、「このままの形ではあまり良くない」と思ったと言います。そこで形を洗練させるとともに、ユーザーがいろいろな用途に使える器となるよう工夫を凝らし、現代の日本の暮らしに合わせて進化させたのが、この「品鑑茶具(ひんかんちゃぐ)」です。
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テイスティング茶器の作法に倣ったお茶の淹れ方
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- 「品鑑茶具」は急須と湯呑みの2点から成る茶器セットです。急須はマグカップ形で、蓋を被せて使います。蓋の縁には正面に小さな穴が7つ刻まれており、これが茶漉しと注ぎ口の役目を果たします。同様に背面には小さな穴が1つ刻まれており、これが空気穴となります。お茶の淹れ方はテイスティング茶器の作法に倣いました。急須に適量の茶葉を入れ、湯を7〜8分目まで注ぎ、蓋を被せて蒸らします。そして取っ手を持って蓋を押さえながら、湯呑みに向かって急須を一気に傾けます。そのまま湯呑みの縁に胴と蓋のつまみを載せ、手をそっと離してお茶が出切るまで待ちます。お茶が出切ったら、急須を下ろして終わり。2煎目、3煎目を淹れる時も同様の方法を行います。マグカップ形の急須なので、茶葉を洗い流しやすいのも特徴。また、茶葉の代わりにティーバッグを入れても同様の方法でご使用いただけます。
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緑茶や紅茶、中国茶に加え、夏には冷茶も楽しめる
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- 「おすすめは茶葉が大きく広がる中国茶ですが、ある程度の大きさの茶葉であれば、緑茶や紅茶にも使えるように開発しました。いかに茶葉が詰まりにくく、湯の切れが良くなるかに留意し、なおかつ穴が目立ち過ぎることがないよう、穴の形や大きさ、数を調整しました」と寺内さん。最近は氷出しの冷茶にも注目が集まっていますが、「品鑑茶具」を使えば簡単に淹れることができます。急須に緑茶の茶葉を多めに入れた後、その上にロック氷をいくつか載せていきます。急須から氷が多少はみ出るくらいの量で構いません。そのまま1時間〜数時間放置すると、氷がじわじわと溶け出し、甘味や旨味を多く含んだ冷茶が出来上がります。前述した方法で最後の一滴まで冷茶を湯呑みに出し切れば、その味わいはまるで玉露のようです。ぜひお試しください。
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有田焼の伝統文様や釉薬をモダンにアレンジ
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- 鱗文 品鑑茶具
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- 麻の葉文 品鑑茶具
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- 矢羽文 品鑑茶具
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- 内白青マット 品鑑茶具
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- マンガン釉銀彩 品鑑茶具
- 今回、5種類の「品鑑茶具」をご用意しました。有田焼の染付に用いられる伝統文様を独自にアレンジした新作3種類と、個性的な釉薬を掛けた2種類です。染付は「鱗文」「麻の葉文」「矢羽文」で、いずれも胴の下部にすっきりと手描きされ、上部は白磁を生かした抜けのある構成となっています。釉薬の1つは目の冴えるような青色の「青マット」、もう1つはまるでアンティーク銀食器のような色合いの「マンガン釉銀彩」です。どれも異彩・超絶な有田焼の伝統技法によって作られていますが、現代の暮らしに似合うモダンさとコンパクトさを持ち合わせている点が特徴です。
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- また汎用性にも優れており、マグカップ形をした急須は、蓋を外せば、そのままマグカップとして使うことができます。口が広い、端正な形をした湯呑みは、蕎麦猪口や小鉢としてもご活用できます。1杯分のお茶を淹れる茶器ですので、特にひとり暮らしやワークスペースでのご使用におすすめです。
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意と匠研究所がサポート
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- 意と匠研究所は、これまでも、これからも挑戦を続ける李荘窯を応援していきます。ここでご紹介する商品の売り上げの20%をいただき、李荘窯の活動や商品について取材や原稿執筆、写真撮影、編集などを丁寧に行い、また新規開発に対してもアドバイスを適宜行っていきます。
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