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2022年、「闘う下着」に変える!武州正藍染のトランクス・ショーツは肌に優しく、しかも凛々しい
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- はじめまして。野川染織工業の五代目、野川雄気です。渋沢栄一翁の故郷である武州で、藍染めに携わっています。
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- ちいさな工場ですが、100年超の歴史があること、そして、糸を染める工程から製品の完成までのすべてを担っているのが自慢です。剣道着づくりの分野では、段位をもつ数多くの方々が「野川染織工業の一着を」と指名してくださっているのもまた、ありがたく感じています。
- でも……ずっと悩んでいたことがあります。武州の藍染めは、剣道着としての評価こそ高くいただいているものの、それだけでいいのか。それが今回の出発点です。
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製作者の想い
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「先染め」の強みは、下着でこそ生きる
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- そもそも藍染めって芸術品ではないと、私は思うんです。生活のなかに溶け込んだ身近な存在であってほしい。私は藍染めを再びそういうものにしたいんです。
- 藍染めは古くから「ジャパン・ブルー」と称されてきました。海外からやってきた人の目に印象深く映ったんですね。日本では、みなが深い青をまとっている、と……。では、なぜ昔の人がこぞって身につけていたのか。藍染めの特性が優れていたからでしょう。まず、汗に強いから野良仕事に耐えられる。洗剤のない時代でも、藍のもつ抗菌成分が実用のうえでいい働きをした。しかも、衣服が肌に直接触れても、肌が荒れにくい。
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- そうした持ち味って、現代でいうと何に活かされるべきなのか。肌に直接触れる下着でしょう。だから今回、トランクスとショーツづくりに臨んだのです。
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- さらに……私たち野川染織工業の製造工程がここでモノを言うとも考えました。私たちは「先染め」を守り続けた工場です。縫製して完成させた製品を最後に染めるのではなくて、糸の段階で藍に浸します。それも20〜30回。まずは年を重ねた藍で染め、淡い色をつけます。そのあと、順々に若い藍のなかに浸けていく。すると、糸は次第に濃い青色を帯びていくんです。
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- こうして藍染めした糸を織った生地で、たとえば剣道着などを仕立てると、経年変化していくなかでも、極端な色褪せはしません。それどころか風合いが味わい深くなっていくんです。
- でも、大事なことがそれ以上にあります。藍に糸の段階でおよそ20回浸せば、繊維のなかに入る植物の成分そのものの量が段違いになります。つまりは、汗により強くて、肌触りもきわめて優しいものが完成するに違いない。
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藍の優位性を「毎日!」「身体の芯で!」
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- ここからです。私は2人のプロフェッショナルと協業を進めました。オリジナリティあふれる体験型プログラムを数々企画立案して提供する会員制ウェブサイト「エピキュリアン」の米澤多恵代表。そして、国内の名だたる繊維産地で企画指導に長年携わるとともに、いくつもの大学や専門学校で講師を歴任してきた「シナジープランニング」の坂口昌章代表です。
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- そもそも、武州正藍染で全く新しい下着を、というプロジェクト像を最初に描いてくれたのは米澤代表でした。藍の先染めで下着を完成させて、それを「たまにではなくて毎日使いましょう」、さらに「身体の中心でその価値を感じましょう」と、その意義をはっきりと言語化したのが彼女です。これ、「毎日」「身体の中心」というところが重要ですね。それでこそ、藍が真価をより発揮できますから。
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- では、具体的にどのようなデザインをなす一着にするのか。坂口代表は、そこを担ってくれました。「先染めの素材は間違いなくよい。でも、それだけでは格別の下着とはいえません。だったらどうするか、です」と、最初の会議に臨んだ場面から繰り返し語っていました。唯一無二の下着を完成させるためには、藍染めの強さだけに頼らない何がそこに必要なのかという話ですね。
- 私たち3人で試作版の評価を何度も何度も重ねていくなかで、だんだんと光が見えてきました。
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剣道着に、大きなヒントがあった
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- 私たちが下着に必須と考えたのは、まず触感でした。これは、先染めの藍を活かした生地を織ることで果たせるわけです。豆刺し子(豆を想起させるちいさな凹凸をかたちづくる)の生地を下着にすれば、思わぬほどに気持ちのいい一着になるという確信はありました。
- となると、問題はデザインです。3人で開発に着手してから4度目の会議に臨んだとき、答えが出ました。それは……。
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- 「脇あき」がポイントになる、という結論です。剣道着の袴を思わせるような、身体の左右が触れる部位に三角形の空間をあえてつくるという手法でした。
- 単なるデザイン上の訴求に留まりません。脇あきがあると、穿く人の動きがごく自然なものになりますし、下着であるにもかかわらず、生地と身体がつかず離れれず、といった絶妙な感覚をもたらせるんです。
- ここから、具体的な仕様がぐいぐいと定まっていきました。「袴のように」を大きなテーマに据えるなら、紐をつけるのが有効です。それを引き締める所作こそが、この一着を穿く場面で気持ちをもぎゅっと高める効果を生みますからね。
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ほかでは体験しえない穿き心地に
- つまり、3人で議論を進めた結果として、野川染織工業でないと完成しえない下着が生まれたという話です。
- まず、藍に糸の段階でおよそ20回、先染めするからこそ、藍の持ち味を一着にしっかりと込められる。そして、剣道着づくりの分野に長年携わってきたからこそ、そこで培った技術を下着にも活かし切れる。そういうことです。
- 完成した下着を試着した坂口代表はこういいます。
「これはクセになるねえ。紐をきゅっと締めると、まさに気持ちも決まる。しかも、予想していた以上に、穿いていて身体に障らないのがまたいい。ごついように見えて、実は着用するとラクな一着に仕上がった」 - 米澤代表はこう語りました。
「男性用トランクスだけでなく、女性のショーツをつくるのが大事と考えました。デリケートな部分に直接触れるのはケミカルな素材ではなく、天然の、しかも、身体によいものであることが大切ですよね」 -
- 女性用のショーツでは、ショーツならではの使用感を大事に考え脇あきではなく、裾にスリットをあしらうつくりとしました。
これによって、肌触りと穿き心地を自然なかたちで両立させています。 - 2022年、ぜひこの一着から毎日の暮らしを始めていただきたいと願っています。
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その素材にも、その形状にも必然性が!
- まず何をおいても、野川さんの言葉に惹かれます。「藍染めを、もっと生活に身近なところに引き戻したい」。で、一番身近といえば、それはもう下着なんですね。
- トランクス、私も穿いてみました。感想を申しますと……。
「昂揚感と安らぎの両方をもたらしてくれる一着」でしたね。 - 下着というのはどこまでも存在感のないものがいいのだと、てっきり思っていたら、そうではなかったと気づかされました。
- このトランクスって「ほぼ袴のようなもの」ですよね。ずいぶんと大仰な姿かたちだなあと感じましたが、これを穿く所作を通して、確かに気持ちは高ぶります。面倒に思われるかもしれませんが、私はすぐに慣れました。身体の両側面で、紐をくいっと締める意識をもてば大丈夫です。この所作の体験こそが、このトランクスの第一の凄みといってもいいでしょう。
- 第二の凄みは触感ですね。今回は「豆刺し子」と「浅葱(あさぎ)平織り」という2つの生地を使っています。前者は細かな凹凸が思いのほか楽しく感じられるし、それが肌触りのうえで意外や煩くない。後者はもうどこまでも穏やかな穿き心地でした。
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- ショーツのほうは、当然ですが女性に試着してもらいました。意外なほどに違和感がない。つけ心地が穏やかなだけではなくて、肌離れの感覚がとてもいい。開放感があって、なんだかすごく不思議な一着、とのことでしたよ。
- ああ、先染めの藍といい、袴をモチーフに選んだ判断といい、野川染織工業だからなしえた下着なのだと理解できました。
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2022年から、この一着とともに…
- これ、ある意味で「勝負どころの下着」とも表現できるかと思います。もちろん毎日、身につけたいところですし、とりわけ、今日は大事な1日という場面では確実に穿きたいと思わせられました。
- できれば正月、この下着を身につける所作から始めたいところです。野川さんに尋ねたところ、「最初の20着(ただし12月10日までのご支援・決済分まで)は、年内にお届けします」とのことです。<※既に最初の20着は完売となりました>
- 男性のトランクス、女性のショーツともに、値段がちょっと立派なものになっていること、どうかお許しください。糸からの先染めも、織りも、そして縫製も、ついでに言いますと一着ごとの梱包も、すべて武州の野川染織工業の工場内で、職人さんたちの手でなされる製品です。
- 最後にもうひとつだけ、大事な話……。今回のプロジェクトでお届けするのは、先染めの太い糸を織り込んだ生地を、洋裁ではまず見られない「折り伏せ縫い」で仕上げた一着です。縫製がとても美しいだけでなく、身体に当たらない、そんな野川染織工業が得意としてきた手法が、ここでも活かされているわけです。ずっと長く穿き続けられる下着であることをお伝えしますね。
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