- 私たち福田織物は、この20年間、業界の常識を破り続けることに挑んできました。
ここ日本では、私たちのような「機屋(はたや)」は、大手の問屋から糸の支給を受けて、仕様書の通りに織り、それを収めるのが仕事であり、収入は手数料のみ……。
20年前、私たちは織物の自主開発に挑み始めました。みずからのアイデアや知恵を生かし、完成した織物は直接、メーカーやデザイナーに売り込むという形態への挑戦です。まずは海外のブランドから注目をいただき、その後、国内でも取引が増えました。
当時、細い紡績糸「100番手」を織れる企業が存在しなかったのですが、それに成功。さらには、世界中で今も私たち福田織物でしか生産できていない、超極細の「300番手単糸」の織りも果たしました。
「単糸」とは、紡績したままの一本の糸。織るのは本当に大変ですが、極めてなめらかな仕上がりになります。
春風をまとったような触感に
- 「300番手単糸」の紡績糸は、中国の新疆ウイグル地方で栽培されるもので、数年に1回しか採れないプレミアムな超長綿で紡績されています。貴重で、ごくわずかな数量であるため、そもそも糸自体が入手困難です。しかも、そうした極細糸を織るというのがまた、困難を極めます。
少し引っ張っただけで切れてしまうような、繊細なものだからです。それでも私たちは挑みました。
苦心を重ねたうえで完成した生地は、透けるほどに美しく、その優しい肌触りはシルクやカシミアを超越するものでした。
福田織物は、こうして完成した「300番手単糸」の生地をストールとして商品化し、1枚10万円で限定販売しています(実は10万円では利益はほぼ出ませんが、皆さんに体感してほしくて、思い切ってこの価格にしました)。その風合いを「春風をまとったような」と表現してくださるお客さまもいらっしゃいました。
歩留まりはわずか4割、残りは…
- ただ、この「300番手単糸」の織物には、作る側からすると、決定的な難点があります。
あまりに微細な糸なので、織り上げる途上で、わずかですがヨレる箇所がどうしても出ます。10万円のストールとして販売するには、そうした箇所を除いたところから商品化しなければいけません。
そうなると、使えるのは、製造したうちのわずか4割……。残りの6割の生地は、ストールには使えず、工場で大事に保管したままです。これをどうするか。
私たちが今回考えたのは、「貴重な糸、そして職人が汗して作り上げた貴重な織物」を無駄にしないためにどうするか、でした。
「世界最高の寝ごこち」になる
- 議論を重ねました……この残りの6割の生地を、ブランケットとおくるみにしよう、というのが、私たちの結論です。
そもそもの原材料が希少極まる糸ですし、職人が力を合わせて織り上げた生地ですから、寝るときにかけるブランケットや、赤ちゃんを包むおくるみにしてしまうことに、思うところがないわけではありません。でも、「他に類がない」と断言できる「300番手単糸」の生地は、肌にじかに触れてこそ、その存在意義がお客さまに伝わります。だからこそ、ここは思い切って、ブランケットやおくるみとして使っていただきたいと考えました。そうすることで「300番手羊糸」の真価が生きる、という判断です。
大人にも赤ちゃんにも、きっと世界最高、かつ唯一無二の寝ごこちをご提供できると確信しております。前にお伝えしたように、生地の一部にヨレなどがありますが、素材の質感や風合いには支障ありませんから、その点はお許しください。
「バチが当たります!」と開口一番…
- 「300番手単糸」という、言ってみれば奇跡のような生地を、ブランケットにしてしまいましょうと提案した場面で、福田織物の社長はこう言いました。
「そんなことしたら、バチが当たります!」。素材の入手も難しく、しかも織物として完成させるのは至難の業……。よそゆきでまとうストールならいざ知らず、寝具にするのか、という思いはあったでしょうね。
でも、私からこう重ねて尋ねたのです。「でも福田さん、この『300番手単糸』の生地を全身にかけて寝てみたくないですか」。すると社長は、少しの間をおいてから返答しました。
「寝てみたい。それはすごいことになると思う」。
世界で一番軽い寝具のひとつかも…
- 今回作るのは、大人向けのブランケット、そして赤ちゃん向けのおくるみです。
福田織物の専務(社長の奥さんです)は、こう語りました。
「これは、人生の最初と最後に使ってほしい」。
なるほどと思いましたね。ブランケットは、贅沢な大人の寝具として贅沢に使ってほしいし、もうひとつ別の考え方もできます。シニアの方、寝たきりの方にとって、寝具は「重い」んです。それが負担になる方々にとって、「世界で一番軽い寝具」の座を競うかもしれないと私には思えるこのブランケットは、重要な意味を持つはず。
機能面を少し言い添えますと、吸水性にも速乾性にも実に長けていますから、その意味でも、ブランケットやおくるみにちょうどいい。
現在販売中のストールは1枚10万円ですが、今回の製品は福田織物がちょっとおまけしてくれました。それでも値段は高いですけれど、どんな素材をどのような技術で織り上げたかを想像すれば、私には納得がいきます。
次に作れる時期は「全くわからない」
- 「300番手単糸」のこの織物、福田織物の職人たちが「もう二度と作りたくない」とこぼすほどに大変な作業を伴ったそうです。
さらに言うと、そもそも次にいつ作れるか、めどは立っていないらしい。「300番手単糸」の原料が、今度いつ手に入るかが見えてこないためです。それほどに原材料が希少なものなんですね。
「もしかしたら、これが最後の『300番手単糸』になるかも」とすらいいます。それをよくブランケットとおくるみにすることを決心してくれました。
「材料は一切無駄にしたくない」が身上の福田織物です。ブランケットとおくるみを採寸した後にさらに残る余り布は、男性用のポケットチーフに仕立ててくれる、とのことでした。これもまた、半透明の風合いがいい。カジュアルなジャケットの胸元を彩ってくれそうです。 チケットについて
◆「300番手単糸」の、透けるふんわりチーフ:5,000円
- サイズ:30×30cm
素材:綿100% ◆「300番手単糸」の、透けるおくるみ(10枚限定):40,000円
- サイズ:100×140cm
素材:綿100%
*おくるみとして使い終えた後は、大人用のストールとしても使えます。 ◆「300番手単糸」の、透けるブランケット(3枚限定):80,000円
- サイズ:210×140cm
素材:綿100% - 手入れ:いずれの製品も、洗濯時はドライクリーニングをお願いします。